本年8月より、「若手研究者・大学院生 研究発表会」を開催しています。 これは「街中から学知を広く一般社会に広げていく」という「学び舎」部の活動の一環として、若手の研究者・大学院生に自らの専門研究テーマについて発表してもらったり、学術書の読書会を行って、参加者同士で議論するという会です。
この会の主な目的は以下のようなものです。
正式な学会や研究会ではハードルが高い、またはこれまで学会などでの発表経験がない、もしくは少ないという方のために「研究発表の練習機会」とでもいうべき場を高円寺の街中で作ろうというものです。なお、現在は主に歴史学関係の研究発表を中心に行っていますが、今後は範囲を広げていくことも検討中です。
それに、大学や所属が異なりつつも、同じような研究関心をもつ仲間と気軽に対面で語り合えるという場を作りたいという目的もあります。
加えて、現在の参加者は、大学院生・研究者・編集者・書店経営者などであり、一定の経験を積んだ研究者からのフィードバックや意見をもらえるだけではなく、編集者などからはその研究をいずれ書籍として出版する場合のアドバイスなども行われています。
なお、これまで行った研究発表は以下の通りです。
第1回 8月23日(土)
- 発表者
- 藤原玄明さん(法政大学大学院)
- 発表題目
- 高円寺の都市史
- 発表概要
- 「都市と建築の歴史」という視点から主に2つのテーマで発表しました。一つ目は、台湾人作家翁鬧(オンドウ)が1935年に発表した「東京郊外浪人街―高圓寺界隈―」などの資料を手掛かりに読み解く戦前の高円寺で、二つ目は、戦後復興期の高円寺駅北口駅前に建設されたマーケット「大一市場」の変遷過程です。古地図や図面、写真、文献資料などを組み合わせて、高円寺という街がどのようにできてきたのかといったことを研究中です。
第2回 9月13日(土)
- 発表者
- ヴィクトリヤ・ニコロヴァさん(東京大学大学院)
- 発表題目
- 中国統一化論争の貫戦史
- 発表概要
- 1937年、日中戦争前夜。中国社会の動向をめぐって、日本語言論空間ではさまざまな言説が形成されていました。そうした風潮の最中、日本人中国研究者の間では「中国統一化論争」が展開されます。本発表では、中村政則の「貫戦史」という方法に示唆を受け、この論争を再検討するための視座を模索しました。具体的には、この論争が戦後においていかに再構築されてきたのかを追うことによって、むしろ語られてこなかった部分、そしてそれが意味するものに目を向けてみました。
第3回 11月22日(土)
- 発表者
- 名合史子さん(東京外国語大学大学院)
- 発表題目
- 巻原発反対運動・住民投票から捉え直す1990年代の「民主主義」
―「青い海と緑の会」記録資料を中心に― - 発表概要
- 新潟県巻町(現・新潟市)で1996年に実現し、原発計画の撤回を導いた住民投票に注目し、「民主主義」という言葉が、当初原発反対派の希望を含んだものから、推進派や国策との対立の中で狭義な意味合いに追い込まれていったことを分析しました。運動は地域の分断を招いた一方で、従来のしめつけを乗り越え、「一人ひとり」の生活や福祉、女性の活躍といった多様な要望や草の根のエネルギーが存在したことも示唆しています。今後は運動のその後にも注目しながら、混在する思想を90年代の一断面として位置付けていきたいです。
