
詩人の言葉を胸に宿してこの街で生きています
コクテイル書房 狩野俊 様
自己紹介
中通りを入った横丁で店を開き、あづま通りに移転し6年間、北中の古民家に店を構えて15年。20年以上も高円寺の人々に育てていただき、今に至ります。氷川神社の社報に隔月で「かつてのこうえんじん」というタイトルで文章を書かせていただき、高円寺という街の根源を探ろうと、かつてこの地に生きた人々の背中を追い、想いや言葉を今に蘇らせようと試みています。「日本のインド」と称された高円寺ですが、インドも今や世界3位の経済力を持つ大国となりました。インドも変われば、高円寺も変わります。長泉寺の前に座り、広い道幅の参道を眺めると、行きかう人に交じって、時折透けている人の姿を見ることがあります。かつて高円寺に生きていた、この世にはいるはずのない人なのでしょう。彼ら、彼女たちは、日によって表情を変えます。笑顔の日もあれば、暗い顔で下を向き歩いている日もあります。高円寺は、生きているわたしたちの街でもありますが、本来なら地の下で眠っている人たちの街でもあります。変わっていくものを受け止め、変わらないものを見つめつづける。「見えぬものでもあるんだよ、見えぬものこそあるんだよ」詩人の言葉を胸に宿してこの街で生きています。
好きな本、作家
古い文学書を読んでいた時がありました。昭和14年に出版された『墨東奇譚』は著者の永井荷風が自ら装丁を手掛けました。著者が自ら装丁を手がけるのは、夏目漱石が『こころ』で先鞭をつけ、村上春樹が『ノルウェイの森』で試みたように、今につづく系譜があります。著者のこだわりを超えた、自らの分身としての著作、という想いを感じます。荷風の同書には、木村荘八の挿絵が入り、活版のでこぼこしたそれは、美術作品のようです。奥付には荷風自らが押印した判が押され、署名本のように、書き手との距離を縮めます。この総合芸術のような本を読むと、戦前の東京に引き込まれます。読むというよりは、本の中に入る込むような、その世界を体験するような、不思議な感覚をもたらしてくれます。荷風は、この本の中で、震災に寄って失われてしまった江戸の姿を探し、隅田川を超えた小さな遊郭とそこにいる女性に、それを見出します。未来人である私は、この本が出された6年後に、震災と同じような規模の戦災で、その街が焼き払われることを知っています。無常を感じる人もいるでしょうが、古本屋はしたたかに、無常を超える術として、古い文学書を読むことを進め、今を生き延びていくのです。
何か一言
商店会の会員も募集しています。いっしょに高円寺を本の街にしていきましょう。
コクテイル書房
営業時間 | 昼営業 12:00-15:00 土日 / 夜営業 18:00-23:00 |
---|---|
定休日 | 無休 |
電話番号 | 03-3310-8130 |
住所 | 東京都杉並区高円寺北3-8-13 |
URL | https://www.koenji-cocktail.info/ |